2016年10月10日

彼の代わりに抱かせて

実家で昔飼ってた、
白と黒のぶちのミックス犬は、
長めの毛がもこもこ可愛くて、
近所の子供達にも人気だった。
悪気はないんだろうけど、
子供だから判らなくて、
無理矢理前足を掴むから、
彼はそれがトラウマになったみたい。
生涯前足を守り通した。

だから彼は、
私にじゃれて来たこともないし、
私が彼を抱いたこともない。
前足を持ち上げられたくないのだ。

私の側にやって来ても、
私が彼の方を向いて手を出すと、
彼は私に横向きかお尻を向けるから、
いつも背中を撫でてあげた。



彼ともう1匹柴犬が居た頃、
たまに実家に帰ると、
2匹を連れて散歩に行った。
散歩と言うか、
すごい田舎なので、
山の中でリードを外して走らせる。

彼等が自由に走り回るのを、
私は草の上に座って眺めていた。
晩年の彼はすぐに疲れて、
先に私の側に戻ってくる。
そして、
おとなしく隣に寄り添って座る。
そんな時はそっと、
彼の背中に腕だけ乗せた。
私のお尻や太ももの外側に、
彼のお腹の外側がくっついて、
体温を感じる。
抱っこはさせてくれなかったけど、
私の側に居るのはいいんだね。

そうやって、
彼と一緒に並んで、
まだ遊んでいる柴犬を待っていた。

あれは秋だった。
だから、
秋になると、
あの風景を想い出す。
 

ラブラドールレトリバーの抱き枕がある。
前足もお腹も無防備に伸びきって、
その抱き心地と、
彼と同じなサイズに一目惚れした。
彼とは色も違うし、
そもそも犬種が違うんだけど、
同じ名前をつけてみた。

お布団の中でも、
お互いの側面をくっつけて、
並んで寝る。

彼より若かった柴犬も死んだ後は、
もう一回り小さいラブラドールも買って、
だから犬種が違うんだけど、
2匹と並んで寝ている。

たまにしか散歩に行かなかったぶん、
あれから何年もずっと一緒。

抱き枕は、
日焼けして色褪せてるけど、
彼が私に寄り添って座った時、
一緒に見ていた景色は、
何年経っても色褪せないんだ。


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